高橋正樹 | Masaki Takahashi
2025-02-20
目次
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今回は”カーボンニュートラル”をテーマとして取り上げます。

カーボンニュートラルを推進するうえでの課題、対応策を述べた後、Keiganが貢献できる内容について触れます。

長くなりますが、最後までお付き合いください!

カーボンニュートラルとはなにか?

日常生活でこの言葉を耳にする機会が増えてきました。カーボンニュートラル(以下、CNと記載)は、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量をバランスさせ、実質的に大気中のCO2の増減をゼロにすることです。気候変動の主な要因である、温室効果ガスの削減が目的です。我が国も、2050年までにCNを達成することを目標に掲げています。この目標の実現に向けて様々な取り組みが進められています。

「カーボンニュートラル」「温室効果ガス」の関係

今回も、言葉の定義を明確にするところから始めたいと思います。

2020年10月、我が国の首相は下記の内容で所信表明演説を行いました。

「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」。

このなかで、「温室効果ガス」という言葉が出てきます。それでは「温室効果ガス」とは何でしょうか?

温室効果ガス(Greenhouse Gasの略、以下にGHGと記載)は、法令「地球温暖化対策の推進に関する法律」で下記のように定義されています。

第二条 3 この法律において「温室効果ガス」とは、次に掲げる物質をいう。

一 二酸化炭素

二 メタン

三 一酸化二窒素

四 ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの

五 パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの

六 六ふっ化硫黄

七 三ふっ化窒素

この中で、CO2がGHGの大半を占めます。

環境省が2022年度に公表した資料によると、CO2はGHG総排出量の91.3%を占めています。以下、メタンは2.6%、一酸化二窒素は1.5%となります。

従って、 CN推進にはGHG削減が必要 → GHGの大半はCO2 → CN推進にはCO2削減が必要 という三段論法になります。

なお、本原稿を書いている2025年2月に、政府は「エネルギー基本計画(エネ基)」と、その具体策にあたる国家戦略「GX(グリーン・トランスフォーメーション)2040ビジョン」を閣議決定しました。2040年の電源構成は、再生可能エネルギーを4~5割、原子力を2割程度にするとしています。この数値は、2023年速報値のほぼ2倍であり、かなりストレッチされた目標です。私たちの生活に欠かせないエネルギー源の構成が、近い将来に変化しつつあるのです。

CN推進の課題

つづいて、CNを推進するうえでの課題を挙げます。

1.現状把握

第一の課題は、CO2排出量を定量的に把握することです。いつ・どこで・だれが・どれくらい量のCO2を排出しているのかを把握することです。国全体を考えたとき、経済活動の過程を細分化し、各過程におけるCO2排出量を把握することが必要です。闇雲にCO2排出削減の活動を行ったとしても、その効果が限定されてしまいます。CO2排出量が少ない過程よりも、多い過程に対して重点的に活動を進める方が、より高い効果が期待できます。

この課題がまず初めに着手すべき課題であり重要です。その理由は、あらゆる活動に適応することができ、以降に述べる課題の対応策を打つ前提となる課題だからです。巨視的には製品のサプライチェーン全体、微視的には工場の生産ラインや私たち各家庭の個々の機器にも適用できます。

なお余談ですが、家庭のCO2排出量は、簡単に計算することができます。多くのアプリが配布されており、ご興味のある方は試してみてください。

2.再生可能エネルギーの創出

第二の課題は、再生可能エネルギーを創出することです。再生可能エネルギーとは、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど、自然界に常に存在するエネルギーを指します。現在、日本で消費されるエネルギーの多くは、化石燃料に依存しています。資源エネルギーによると2023年には、化石燃料の依存度は83.5%です。化石燃料に依存したエネルギーを消費することは、CO2排出量を排出することになってしまいます。

日本の一次エネルギー供給構成の推移

3.エネルギー輸送や備蓄の効率化

第三の課題は、エネルギーの輸送や備蓄の効率化です。これはエネルギーの形態が変化する際には必ずロスが発生します。これは、エネルギー変換効率があるためです。

電気エネルギーを例に挙げます。電気エネルギーは、送電時に熱エネルギーとして損失しています。また、蓄電時には化学エネルギーに変換されて、蓄電池に備蓄されます。これらのタイミングでエネルギー形態が変換され、ロスが発生します。エネルギー変換効率を向上させることが、CO2排出量を低減しCN推進に効果があります。

4.エネルギー消費量の削減

第四の課題は、エネルギー消費量の削減と経済活動の維持・発展を両立することです。過去と同様に、物質的な豊かさを追求し、さらなる経済活動や生活水準の向上を図るには、これまでに以上の消費エネルギーが必要となります。

ここで経済活動を2つに分け、具体的な方向性を述べます。第一に、製品やサービスの製造活動です。ここでは生産性の向上が必要となります。生産性向上とは、投入するエネルギーを最小化し、生み出す製品やサービスを量的・質的に最大化することです。第二は、製品やサービスの使用・消費活動です。少ないエネルギー消費で、効率よく使用することが必要となります。

さいごに

「貧乏だけど贅沢」。物質的的な豊かさの価値観を転換し、精神的な豊かさの価値観に転換することも大切です。これは、消費エネルギー削減の観点からも重要であることを、この章の最後に付け加えておきます。

今回は、CN推進のための課題を述べました。次回は、具体的に推進するための対応策やリスクについて述べます。

出展

※ 環境省 ”2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)”

※ 資源エネルギー庁HP 「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?

※ 資源エネルギー庁HP 2023―日本が抱えているエネルギー問題(前編)

※ 資源エネルギー庁HP 第7次エネルギー基本計画(令和7年2月)

この記事を書いた人


約20年間、電機メーカーで生産システムの開発、新規事業・新工場の立ち上げに従事。
先進的なロボット開発と伝統的なモノづくりを融合し、新たなムーブメントを起こすべく、2022年からKeiganで活動。
ロボットシステムの導入や営業活動を主に担当。自身の専門分野の幅を広げ深掘りしながら、技術ブログを執筆中。

高橋正樹 | Masaki Takahashi