高橋正樹 | Masaki Takahashi
2025-02-27
目次
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今回は、CN推進のための具体的な対応策について述べます。

CN推進のための具体的な方策

1. 状態把握の観点

1-1. ライフサイクルアセスメント

 製品ライフサイクルを俯瞰し、インプットデータ(エネルギー消費量)とアウトプットデータ(環境負荷物質の排出量)を定量的に分析します。製品ライフサイクルとは、原材料調達、加工組立、物流、使用、廃棄の各過程を指します。これらの各過程において、消費エネルギーを算出し、どの過程での消費量が多く、消費抑制が可能であるかを特定します。エネルギー消費量にCO2排出係数を乗じて、CO2排出量を算出することができます。

 製品ライフサイクルにおけるCO2排出量の計算に関して、環境省の「サプライチェーン排出量算定の考え方」に詳述されています。詳しくはこちらをご覧ください。

1-2. センサーとIoTデバイスの活用

製品が製造あるいは使用される現場において、消費されるエネルギー量を計測してデータ収集します。様々なセンサーを用いて計測し、さらに通信機器を活用して計測データを収集します。IoTデバイスと言われる小型の機器が普及しています。

例えば、センサーには、消費電力を計測する電力計や、圧縮空気の消費量を計測する流量計、圧力計などがあります。これらを有線LANやWi-Fiなどの無線ネットワークと接続し、計測データをコントローラに伝送し、分析します。IoTデバイスを活用することにより、いつ・どのような状況でエネルギー消費が変動しているのかをリアルタイムで把握することができます。

 

2. 創出・輸送・備蓄の観点

2-1. 再生可能エネルギーの利用

再生可能エネルギーによって発電量を増加させる事例があります。各方式について、エネルギー変換の高効率化や耐久性向上が図られています。

ここでは太陽光発電を取り上げます。昨今、ペロブスカイト太陽電池が普及し始めています。その理由は、従来のシリコン太陽電池と比較して、高効率で製造コストが低く、設置の自由度が高いためです。2025年に開催される関西万博の会場では、国内最大規模の発電施設が設置され、マスコミでも取り上げられています。

※日経クロステック ”万博に国内最大「ペロブスカイト太陽電池」施設、バス停屋根250mに積水化学が設置”

2-2. エネルギー密度の高い蓄電池の利用

再生可能エネルギーによる発電は、自然環境の変化による発電量の変動が大きいために、安定的に供給できない問題があります。そのため、エネルギーの需給バランスをとるために、エネルギーの備蓄量を増やし、地理的にも分散配置することが重要となります。

電気エネルギーの場合、蓄電池の用途が拡大しています。定置用蓄電池は設置場所の自由度が増しており、移動式蓄電池は車載電池やポータブル機器としても採用されています。この理由は、採用されているリチウムイオンバッテリーの、単位体積当たりのエネルギー密度が高いためです。

2-3. スマートグリッド

上に述べたように、再生可能エネルギーの需給バランスをとる対応策としてスマートグリッドも有効です。通信ネットワークや情報システムを活用し、電気の供給側・需要側の双方から電力量や流れをバランスよく制御し、電力利用を最適化します。電力会社のホームページに詳述されています。

3 消費の観点

ここからは、生産システム・生産設備の消費エネルギー削減の事例を述べます。

3-1. 電動化・回生ブレーキの利用

生産システム・生産設備には、数多くのアクチュエータやモーターが数多く搭載されています。ここでは事例を二つ上げます。

一点目の事例は、アクチュエータの電動化です。アクチュエータの駆動源を、空圧と電動を適宜使い分けることで、消費エネルギー量を削減することが可能です。単一のアクチュエータだけを考慮した場合、電動化により消費エネルギーを抑制できます。しかし、アクチュエータが設備の中の可動部に搭載されている場合には、エネルギー消費量が多くなってしまうこともあります。エアシリンダとエア配管よりも、電動シリンダと配線の方が重量が大きく、可動させるためのエネルギーが増加するためです。このように、全てのアクチュエータを一律に電動化するのではなく、搭載箇所や使用条件によって、適材適所の使い分けが重要です。

二点目の事例は、回生エネルギーの利用です。モーターが減速する際には、回生エネルギーが発生します。この回生エネルギーをバッテリーに蓄え、加速時に放電して使用することで、消費エネルギーを削減できます。電気自動車やハイブリッド車で、一般生活の中でも身近になった方法です。

ただし、電動化や回生ブレーキを利用することで、生産システム自体を製作する段階で、エネルギー消費量および初期投資コストが増加します。システムを長く使用することで、ライフサイクル全体で消費エネルギーを抑えることが重要です。ここでも、先に述べました、ライフサイクル全体視点が必要となります。

3-2. カラクリやジグの利用

生産システムにおける消費エネルギーをゼロにする事例として、カラクリがあります。これは、駆動源に空圧や電力ではなく、人力や自重を用います。とてもシンプルな構成であり、投資コストを抑制できます。ただし実際に使用する場合には、人作業による力や作業時間のばらつき、可動・摺動箇所の経年劣化による耐久性等に留意する必要があります。

3-3. 総合設備効率(OEE)向上

生産システムの生産性を高めることが、消費エネルギーの抑制に寄与します。不良品を製造し廃棄物を生み出すことは、エネルギーの浪費です。また、稼働率の低下により、生産システムが待機中にエネルギーを消費することも無駄です。良品率・稼働率を評価指標とした総合設備効率(OEE)を用いて、生産システムを改善することが生産性向上の有効な手段です。

3-4. コジェネレーションシステム

発電所や工場の炉から廃熱される熱エネルギーを再利用します。熱エネルギーを、空気や水を温めて暖房や温水として利用する方法や、電気エネルギーに変換して利用します。このことによりエネルギー消費量を節約することができます。

メーカーとして、ユーザーとして

メーカーの立場では、地球環境保全と経済発展を両立する高い倫理感が問われます。例えば、故障せず耐久性の高い長い製品は交換周期が長くなります。たとえば、企業の売上が減少してしまいます。製造者は、売り上げを伸ばすために製品を販売しつづけたいと考えます。製品寿命が適度の周期で製品を交換してもらえるよう、機体寿命を設計することも起こるのです。地球環境保全と企業の売上の間にトレードオフが発生し、ここに倫理観が問われます。

企業は誇大広告はやめなければなりません。「グリーンウォッシュ」という言葉があります。これは、英語で「ごまかす」「欠点を隠して良く見せる」という意味であり、「ホワイトウォッシュ」と、「グリーン」(環境)を組み合わせた造語です。実態が無いのに、「地球にやさしい」「サステナブル」等の環境配慮を印象付けることを指します。欧州ではグリーンウォッシュを取り締まりがあり、日本でも消費者庁が行政処分の対象にするなど、目が厳しくなっています。

一方、ユーザーの立場では、Reduce(ゴミ削減)・Reuse(再利用)・Recycle(再資源化)といった3Rと、良いものを長く丁寧に使う意識が必要です。2004年に、ワンガリ・マータイさんが「持続可能な開発、民主主義と平和への貢献」によりノーベル平和賞を受賞しました。マータイさんは、日本語の「もったいない」を、世界共通語「MOTTAINAI」として広めることを提唱しました。地球環境に負担をかけないライフスタイルを広め、持続可能な社会を目指す活動として世界中に広まっています。

出展

※ MOTTAINAI 20 YEARS HP"モッタイナイは、世界をつなぐアイコトバ" 

※ 東京商工会議所 環境コラム ”「地球にやさしい」は使えない? 「グリーンウォッシュ」規制強化へ 

Keigan製品が貢献できること

消費電力量・走行距離の見える化

KeiganALIでは、消費電力量を見える化することができます。横軸に時間・縦軸にバッテリー残量比率(満充電に対する残量の割合)を示します。いつ、どの程度の消費電力があったのかが分かります。

バッテリー残量の見える化

消費電力量と同様に、走行距離も見える化することができます。どのタスク・どの時間帯で、消費電力や走行距離がどのように変動しているのかを分析することで、エネルギー消費量を抑制することができます。

走行距離の見える化

また、上位システムがKeiganALIのバッテリー残量をモニタリングし、適切なタイミングで指示を与えることができます。例えば、バッテリー残量が30%になると、充電するようにアラートを発報したり、自動充電のタスクを実行することができます。

バッテリー残量データの取得コード MQTTAPI マニュアル(Ver1.12.0)より抜粋

Keiganは、持続可能な社会を実現するため、これからも製品開発を進めてまいります。

出展

※ MQTT API マニュアル(Ver1.12.0)

※ ALI充電ドッキングシステムAPI REST API マニュアル 情報

この記事を書いた人


約20年間、電機メーカーで生産システムの開発、新規事業・新工場の立ち上げに従事。
先進的なロボット開発と伝統的なモノづくりを融合し、新たなムーブメントを起こすべく、2022年からKeiganで活動。
ロボットシステムの導入や営業活動を主に担当。自身の専門分野の幅を広げ深掘りしながら、技術ブログを執筆中。

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